立ち上がるときに力が入りにくかったり、階段の昇り降りがツラいと感じてはいないでしょうか。
年齢とともに筋肉や筋力は低下しやすくなりますが、何歳からでも、体の状態に合った筋トレに取り組む意味はあります。昔と同じ重さを持つことだけが目標ではありません。
今回の記事では、加齢による筋肉の衰えの考え方と、足腰のトレーニング、食事や休養の基本についてお話しします。
筋肉は年齢とともに衰える?

年齢が上がるにつれて筋肉量や筋力は低下しやすくなります。ただし、「25歳から誰でも毎年1%ずつ落ちる」というように、同じ年齢から同じ速さで進むわけではありません。
普段の活動量、食事、病気や入院によって動かなかった期間なども関わります。筋肉の量と、力を発揮する能力も同じものではありません。
なので、見た目の細さや年齢だけで判断するより、「椅子から立ちやすいか」「階段を上るときに以前より休憩が必要か」など、自分の動作の変化に目を向けてみてください。
筋肉は年齢にかかわらず鍛えることができます。今の自分に必要な力を、少しずつ保ち、伸ばしていくと考えるとよいですね。
筋肉の衰えと、体の痛みは分けて考える
足腰の力が落ちると、立ち上がる、歩く、階段を上るといった日常の動作が負担になりやすくなります。筋トレは、こうした動作に必要な力を保つための方法です。
一方、肩こりや腰痛、膝の痛み、冷えやむくみを、すべて筋肉の衰えで説明することはできません。筋肉を鍛えれば何でも解決する、ということではないですね。
急に力が入りにくくなった、転びやすくなった、意図せず体重が減っている、という変化がある場合は、年齢や運動不足のせいと決めつけず、医療機関で相談してください。
筋トレは「今の生活に必要な力」をつけるもの

ずっと家にいる人や、一日中デスクに向かっている人は、筋肉へ負荷をかける機会が少なくなりがちです。歩いたり家事をしたりすることに加えて、筋肉を使う運動も取り入れてみましょう。
ただ、決して「筋トレ=ムキムキ」をイメージしないで欲しいです。買い物の荷物を持つ、椅子から立つなど、自分にとって必要な動作を支えるためのものと考えてもらって構いません。
最初は軽く体を動かして準備し、無理のない姿勢で筋トレを行います。柔らかくすることだけで終わらず、動かせる範囲で負荷をかける。整えながら鍛えるということですね。
自分の体重を使う筋トレから始められますし、慣れてきたらダンベルやマシンも選択肢になります。同じ運動が楽にできるようになったら、回数や負荷を少しずつ調節してください。
筋肉づくりを支える食事の基本
筋トレと一緒に見直したいのが、普段の食事です。たんぱく質を含む食品だけに偏らず、主食、主菜、副菜を組み合わせて食べることから考えてみてください。
例えば、朝がパンだけ、昼が具の少ない麺だけになりがちなら、卵やヨーグルト、豆腐などを足す。夕食では魚、肉、卵、大豆製品などの主菜を用意する。こうすると、食事の中でたんぱく質をとる機会を作りやすくなります。
お米やパンを抜けばよいわけでもありません。体を動かすためのエネルギーも必要なので、食事全体の量と組み合わせを見直すことが大切です。
プロテインやHMBなどのサプリメントを、全員が使う必要はありません。食事だけで十分にとれているか、食欲や体重に変化がないかを確認することを先に考えてください。食事制限や栄養指導を受けている方は、その指示を優先してください。
まずは足腰を鍛え、日常の動きを支える

日常の動作では、足腰を使って自分の体を支える場面が多いですね。ここでは、家で取り組める方法をご紹介します。
久しぶりの運動なら、まずは椅子からの立ち座りから始めてみてください。その後に紹介する三つの種目は、体の状態に合わせて選ぶための候補です。全部行う必要はありません。
慣れていない方は、椅子からの立ち座りから
- キャスターのない安定した椅子を使い、両足を腰幅に開いて床につけます。
- 上体を少し前へ傾け、足で床を押してゆっくり立ちます。必要なら肘掛けなどを使って補助してください。
- 姿勢を整えてから、お尻を後ろへ引くようにゆっくり座ります。椅子へ勢いよく落ちないようにします。
- まずは3〜5回を目安に、余裕が残るところで終えます。
痛みで立ち上がれない場合は無理に繰り返さず、相談してください。床への寝起きが難しい方は、次のヒップリフトも省いて構いません。
1. ヒップリフト
ヒップリフトは、お尻から太ももの裏側を使う筋トレです。
- 床に仰向けになり、膝を立てます。足は腰幅程度に開き、両腕を体の横に置きます。
- 足裏で床を押し、息を吐きながらお尻をゆっくり持ち上げます。腰を反らして高さを出そうとしないでください。
- お尻や太ももの裏に力が入ることを確かめ、ゆっくり下ろします。まずは5回程度から試します。
床から少し持ち上がるだけでも構いません。腰の痛みや脚のつりが出る場合は中止してください。
2. バックランジ
片脚を後ろへ引き、前の脚で体を支える種目です。椅子からの立ち座りよりバランスが必要なので、立った姿勢が安定してから試してみてください。
- 動かない台や手すりに手を添え、足を腰幅に開いて立ちます。
- 片脚を小さく後ろへ引き、後ろ足のつま先を床につけます。両足で支えたまま、前の膝を浅く曲げます。
- 前足で床を押し、後ろへ引いた脚を戻します。左右それぞれ3回程度から始めます。
最初は動画のように深く下がらなくて構いません。後ろへ足を引いて戻すだけでもよいので、ふらつかずにできる範囲にしてください。支えがあっても不安定なら、この種目は省きましょう。
3. サイドランジ
サイドランジは、左右に体重を移しながら足腰を使う種目です。
- 動かない台などに手を添え、足を肩幅より少し広く開いて立ちます。
- 両足を床につけたまま、お尻を少し後ろへ引き、片側の膝を浅く曲げます。
- 曲げた側の足で床を押し、真ん中へ戻ります。反対側も同じように行い、左右それぞれ3回程度から試します。
つま先と膝が同じ方向を向くようにしてください。大きく横へ踏み込む必要はありません。膝や股関節が痛む場合や、足元がふらつく場合は省いて構いません。
回数・頻度は、少しずつ増やしていく
厚生労働省の運動ガイドでは、成人・高齢者の筋トレは週2〜3日が目安です。例えば月曜と木曜など、間に休む日を入れると組み立てやすいですね。
上で紹介した少ない回数は、動きに慣れるための出発点です。ずっと同じ軽さでよいという意味ではありません。余裕を持ってでき、その後に痛みや強い疲れが残らなければ、1〜2回増やすなど、一つずつ調節してください。
息を止めずに行い、鋭い痛みや気分の悪さが出たら中止します。回数をこなすことより、安定した動作を優先してください。
また、足腰だけが全身の筋トレというわけではありません。慣れてきたら上半身を使う運動も加え、普段の歩行や家事と組み合わせていくとよいでしょう。
まとめ
筋肉の衰えに備えるには、年齢だけを気にするより、今の体に合った筋トレと、食事、休養を積み重ねていくことが大切です。
まずは椅子からの立ち座りなど、取り組みやすいものを一つ。歩く時間や家事で動く機会も、今の生活に合わせて少しずつ増やしてみてください。
昔の自分と同じことができるかではなく、今より少し動きやすくなることを目指してもらえればと思います。
参考資料
- 厚生労働省 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023:「筋力トレーニングについて」(冊子17〜18ページ)。
- NHS Strength exercises:自宅で始める筋力運動と椅子からの立ち座り。
- 農林水産省 「食事バランスガイド」について:食事の組み合わせと量の考え方。




